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Afloat
​House

化学物質過敏症(以下CS)※を発症された建主のための住宅の計画である。

 

この家は合成接着された集成材や合板、クロス、接着剤など有害な化学物質を放散する材は用いず、無垢の木・鉄・石や安全な原料で生成された漆喰・和紙などから構成している。また、生活用品にも水の蒸発とともに化学物質の揮発量が増大するものが多く、カビや白蟻を防ぐためにも“湿気の滞らない家”がテーマとなった。

昔ながらの蔵から着想を得た置き屋根は本体から浮いており、風が板金屋根に発生する結露を蒸散させてくれる。水分の多い地面には鉄骨の脚が立ち高床とすることで、床下には常時風が流れ、防蟻処理の必要もない。外壁には大きな通気層とスノコ張りの数多の隙間をつくり、室内から外皮の中まで駆け巡る風が湿気を外界へ誘う。室内壁は真壁とし木の構造体が壁内の水を吐き出してくれる。高い調湿性能を持った無垢の建材たちが室内環境を整える。

西側には隣家の広大な雑木林が広がっており、その雑木林によって冷まされた涼しい風と緩やかに揺れる緑の風景をリビングの大開口から取り込んだ。吹抜けからは陽の光が家中に広がる。

 

法令での規制では十分とは言えず、街中には多種多様な化学物質が混在している。"安心できる拠り所"をつくることは決して容易ではないが、住まい手と職人と設計者が問題を共有し共に考え、悩み、汗を流す事でようやく成し得る事ができた。

この家が住まい手を守り、そして背中を押してくれる存在になることを願う。

 

※化学物質過敏症(CS)とは

建物の建材や洗剤、柔軟剤などの生活用品に含まれる化学物質に接触することで、頭痛や倦怠感、不眠など多岐にわたる症状があらわれる疾患。誰もが発症する危険性がある。

何に反応するのか、どのくらいの量でどんな症状が出るかは人によって異なり、その時の体調にも左右されるため、その人に合った対応をしければならない。

竣工:2022年10月 / 所在地:大阪府高槻市 / 延床面積:126.57㎡(38.3坪) / 施工:㐂三郎/ 撮影:Kazuoki Yasugi

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